自然農と言えば、福岡正信、川口由一、岡田茂吉、そして「不耕起」「無肥料」「無除草」「無化学肥料」の 原則がまず思い浮かぶのではないでしょうか。 この思想と実践に触れ感銘を受けた多くの人は、日本だけでなく世界各地で自然農に取り組みその成果を出してきています。 しかし、現状は、ゆっくりとした広がりを見せているものの、まだ多くの人に受け入れられ実践されてはいません。
その理由として、次のようなことが考えられます。 実際、自然農で生計を立てている人を探してみると、まだ一握りの人しかいないでしょう。
では、慣行農法の方はどうかというと、こちらも現実的には非常に厳しい状況で、断崖絶壁に立たされています。 米価の下落に象徴されるように、今の日本の農政では、農業に明るい未来は描くのは難しくなっています。 また、 酪農にしても飼料穀物の高騰で、こちらも破産寸前です。 しかも、化学肥料への依存が農地を疲弊させ、農薬が 農家や消費者の健康を蝕み、できた作物の栄養価も50年前の半分以下となってきています。 また、異常気象、 農家の高齢化、耕作放棄地の増加、自給率の低下など、日本の食料の安全保障を考えると、問題は山積みです。
このような現状の中、はっきり言えることは、これからの時代は、食もある程度自分達で何とか自給できる術を持つことが必要だということです。 そして、この視点に立つとき、自然農はその存在感を増してきます。 なぜなら、それは単に食の安全や確保といったことだけにとどまらず、生態系を理解する体験、環境保全、医療・健康 問題の解決など、日本の社会を根本から変えていく土台作りに大きく貢献できる可能性を秘めているからです。
実際、自然農による生態系への深い理解は、人間と自然の本来のあり方を再認識させ、その感性を回復させてくれます。 また、生き物の多様性を回復した田んぼや畑は、多くの二酸化炭素を吸収し水の浄化もしてくれます。 そして体を使って汗を流すことが日頃の運動不足の解消にもつながり、生活習慣病の予防やストレスの発散にもなります。 しかも、育てた野菜やお米は自分で食べるので、農家のように作物の見てくれや収量に神経質にならず気楽に栽培ができます。 このように今まで自然農にとって短所と思われていたところが、逆に積極的な意味を 持つようになってくるのです。
では、どのように自然農を実践していくのか。 この要求に対して、この「自然農・栽培の手引き」という本が世に出たのは偶然ではないでしょう。 この本は、「農薬・化学肥料は使わない、耕さない、草と虫を敵としない」、 この原則に沿ってどのようにして稲・麦・雑穀・野菜・果樹を栽培するのか、 イラストを使ってわかりやすく具体的に説明してくれています。 しかも、自家採種の方法、収穫の仕方、そして収穫したお米や野菜の保存の仕方など、まさに痒いところに手が届く至れり尽くせりの内容になっています。 今まで自然農を実践してきた人やこれから始めようとする人にとってまさに必読の書と言えます。
多くの人が生活の中に農を取り入れ、自然の営みを慈しみ、そのリズムに沿って時を歩んでいく、これが人間の本来持っている豊かな感性を回復させ、育てていくことにつながっていくと思います。
11/14に新戸地区で開催された秋の収穫祭(表彰式)の様子です。
2022年2月27日更新
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2013年2月2日更新